ざっくり解説 - 着物の染色工程《第四回》

2021年06月03日

皆様、こんばんは。
前回に引き続き、今回も着物の染色工程を解説していきます。

本日 ご紹介する工程は『糊置き』という工程です。
私が専門としている型染・糊防染という染色技法には欠かせない工程です。
型染にも様々な技法がありますが、よく知られているのは型紙を布に当て、その型紙上から直接色を染めていく『ステンシル』というものです。染色体験などでやったことがある方も多いのではないでしょうか?
さらに、よくTシャツを染めるときに使う『シルクスクリーン』などもよく知られている型染の一種ですね。

さて、それでは型染・糊防染とはどのような技法でしょうか。
まずはその特徴についてお話しします♪

型染・糊防染とは、古来より日本に伝わる伝統的な技法の一つです。私が大学で学んでいる『紅型』もこの技法を用いて鮮やかな色彩を生み出しています。
防染に米糠などから成る糊を使うのが大きな特徴で、生地の上に型紙を置き、そしてその上から糊を薄く伸ばして置来ます。そのため、染色作業を終えて糊を洗い流した後に糊が載っていた箇所が白く残ることで絵柄が出てくるのです。
型紙を彫り抜いた箇所▶︎糊が入る箇所▶︎白く残る(色が入らない箇所)となるので、型紙を彫る時には色が入る所を残し、色が入らない所(糊が入るところ)を彫り抜きます。
ステンシル染の場合は型紙の上から直接配色していくので、 型紙を彫った箇所▶︎色が入る箇所 となります。そこが大きな違いですね。糊防染で染色した後に仕上げとしてステンシル技法で金箔などをはるという合わせ技もございます。それぞれの良さを活かしながら、さまざまな技法を合わせることで表現の幅が広がりますね。

さて、それでは いよいよ本日の本題『糊置き』の工程について説明いたします!


▶︎ざっくり解説 - 着物の染色工程《第4回》糊置き

① 生地測り、隅打ち

今回使用する生地は16mの振袖用で、地紋様のある正絹です。
生地が届いた時点でもざっくりと幅や長さを今一度測って確認していますが、糊置きをする前にもう一度、細かい採寸が会うかを再確認し、生地のみみに印を付けます。この印をつける作業を「隅打ち」と言います。
そして、16mをそのまま張るとスペースの問題はもちろんのこと中間部分が弛んでしまうので、おくみと襟/右身頃と右袖/左身頃と左袖に分けて先に生地を切っておきます。訪問着や小袖などは13mなので、おくみ襟と左右の袖/左右の身頃 の二つに分けます。それを終えたら②生地張りに進みます。

②生地張り

糊板という粘着力のある板に生地を張る作業です。隅打ちした生地を真っ直ぐ歪みなく張っていきます。
Tシャツなどに手書きで絵を描たりする経験した方は分かるかと思いますが、真っ直ぐな机に綺麗においても、布地は柔らかく、動いて書きづらいですよね。型染ではどれだけ綺麗に糊を置けるかで作品の出来栄えに差が出るので、歪みなく綺麗に柄を出すために糊板に生地をくっつけて動かないようにしているのです。
これは私の場合ですが、生地を張り終えたら細かい型送りの印を測って書き入れておきます。普通は型紙が横幅40cm縦幅が15cm-30cmぐらいの大きさで、それを繰り返しながら置いていくので型紙の方に柄合わせの印を打っておきますが、私は企画より横幅91cm 縦幅55cmと大きい型紙をよく使い、枚数も多いので生地にも印をつけておきます。

生地を測っている様子
生地を測っている様子
糊置きの様子
糊置きの様子

③糊置き

いよいよ糊置きです。型糊(型染用の糊)に適量の水を加えたものを用意し、生地の印に合わせて型紙を置いて糊置きの作業をしていきます。上にも書いた通り、型紙が大きいため連続して糊置きをすることが困難なので、型紙一枚ぶんずつスペースを空けて1回目の糊置きし、翌日乾いてから前日開けていた部分の糊置きをしていきます。

型紙を置き間違えたり、ズレたりなど、糊置きを失敗すると、一度生地を洗い、「ゆのし」という着物の生地を真っ直ぐに直す古来のアイロンを専門業者にお願いしてから、それが終わったらまた糊置きとなります。
もしくは全く別の生地で最初から始めるかしかなく、どちらにしろ作業が大幅に遅れます。また、生地を洗うと、ゆのしをしても切り分けてある他の生地とはどうしても若干の誤差が出てしまうので、絶対に失敗できません。私が一番神経を使う工程です。生地につけた印と、型紙につけた印と番号を頼りに慎重に作業を進めていきます。

今回も動画を用意しておりますので、是御覧ください^^
本日もここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。

根路銘まり


《本日の動画》


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