ざっくり解説 - 着物の染色工程《第三回》
皆様、こんばんは。染色芸術家 根路銘まりです。
ざっくり解説 着物の染色工程《第三回》ということで、本日も着物作品の制作過程について解説していきます。
今回、ご紹介するのは『紗張り』という工程です。
この紗張りという工程は彫り終わった型紙に紗(しゃ)と呼ばれる薄い網を張る工程です。
実は省いても問題ない作業ですが、これをやっておくと後々少し楽になったり、何度も同じ型を使う場合は便利になるのでやっておいた方が良いです。
それでは解説していきます。
紗張り① 仮張り
型紙の上に紗を歪みなく重ね、カシュー(油性漆塗料)とシンナーを混ぜた液を使って貼り付けていきます。
シワが出ると次の工程に支障が出るので中心から上下左右に刷毛を動かし、シワなく真っ直ぐはるようにします。
張り終わったら真っ直ぐにプレスした新聞紙の上に移し、水分のない刷毛で余った液を取り除きます。
その後30分ほど乾燥させ、りけい紙ではさみ、そしてそれを重い板で挟んでひと晩プレスします。
※りけい紙 - 粘着力のあるものを貼っても剥がせる特殊な紙。よくシールなどを販売する時に台紙として使われている。
紗張り②つり消し
型紙を彫る時、つり(または繋ぎ)というものを付けて彫ります。型紙は一枚の紙なので、全てを柄の通りに彫ってしまうと はずれてしまったり、破れやすくなったりします。そのため、全てを彫るのではなく、一部を繋ぎとしてわざと残しながら彫ります。その繋ぎの部分を「つり」と呼んでいるのです。
下の写真の赤い丸で囲んでいるところがつ『つり』です。
仮張りをした後は紗で全体がつながっているので、余分になったこの『つり』を切り落とすことができ、その作業を「つり消し」と言います。
上に張られている紗はすごく薄いので、紗まで切ってしまわないように絶妙な力加減で つりだけを切り取って網から剥がします。
次の本張りを終えると型紙と紗がより強固にくっつくので、この段階で つり を取っておかないと後から外すことは ほぼ不可能です。
↓↓↓
紗張り③本張り
仮張り - つり消しまで終わるといよいよ本張りです。
本張りの作業は仮張りとほぼ同じで、私の場合はカシューの濃度を仮張りの時より少し濃くした液を使います。
仮張りの時は紗が動くので少し大変ですが、本張りの時は紗がすでに張られていて、あまり動かないので少し楽です。また、仮張りの時は板の上に型紙と紗を置きますが、本張りの時は板の上にプレスした新聞紙を貼って板の汚れを軽減することができます。
さて、本日は『紗張り』という工程について解説いたしました。私の中で一番解説するのが難しいと感じた工程でしたが、いかがでしたか?
今回も動画を用意しておりますので、ぜひご覧ください。
ではまた次回、お待ちしてます!