ざっくり解説 - 着物の染色工程《第一回》

2021年05月20日

 皆様こんばんは!いかがお過ごしでしょうか。
ここのところ、着物の染色工程に関する問い合わせがいくつか届くようになったため、本日から何回かに分けて、ざっくりとですが工程を解説していこうと思います。制作の合間を縫ってブログ更新をするため、毎日一話ずつとはいきませんが、あまり日が開かぬようにいたしますので、読んでみてくださいね ♪

 初めに、着物の染色工程は専門用語も多いため説明が難しいのですが、できる限りわかりやすく解説できるよう努めます。まず最初に制作期間について、芸術作品として着物を一から制作する場合、平均3ヶ月、場合によっては6ヶ月ほどかかります。構成によって工程が増えたりするのでどのような作品かによってもかかる期間が大きく変わります。今回 解説に使う『月讀命』という作品は、型紙と糊を用いて染める『型染・糊防染』という技法で染められており、絵羽模様の振袖、白地あがりの構成です。
 絵羽模様とは、着物を縫い合わせた時に全体が一つの絵のように仕上がる構成のことで「絵を羽織る模様」という意味で『絵羽模様』と言います。そして『白地あがり』とは地の色(背景色)を染めずに生地の白色を残したまま仕上げることを言います。地染めをしない分、早く染め終わりますが、それでもこの作品には4.5ヶ月ほどの時間を費やしました。
ちなみに技法や構成の名前は流派・地域により呼び方が異なる場合がありますのでご了承ください。

 それでは解説に移ります。本日は数ある工程の中の初めの方、原寸大草稿から白黒草稿までの様子をまとめました。



 

1. 原寸大草稿 - 着物の原寸大の紙に下描きをしていきます。全ての基となる図案なのでとても大事な工程です。 縫い合わせなどがズレないように、常に立体の着物の形を頭に入れながら作業を進めていきます。 後ほどこの草稿をもとにトレースし、型紙を制作するめ、影などはつけず、分かりやすい線で描くのがポイントです。縫い合わせた時、絵柄がずれるとカッコ悪いので各箇所の繋がりは特に気をつけて慎重に描きます。




2. 白黒草稿 - 原寸大草稿が終わったら白黒草稿に移ります。原寸大草稿の上にトレース紙を敷き、色が入るところが黒、色が入らないところが白になるように墨汁を使ってなぞっていきます。 ここでも原寸大草稿で合わせた縫い合わせがずれないよう、気をつけて作業を進めます。ぬいしろで隠れる部分もちゃんと染めるため、そのことも頭に入れながらきっちり柄を合わせるのがポイントです。



 この後の工程では、このトレース紙に写した白黒草稿を切り分けて型紙に貼り、型彫りの作業をしていきます。その時、黒く縫った部分を残し、白い部分を全て彫り抜きます。型染・糊防染は、生地の上に型紙をおき、その上からヘラで薄く糊をおいて、糊が固まったら滲み止めをした後に染色作業に入ります。糊がついているところが染まらずに白く残ることで絵柄がでてくるという仕組みです。そのため、型紙を掘り抜いた場所=糊が入る場所となります。詳しくは次回、型紙設計 - 型彫りの解説でお話ししますので、また見に来てくださいね。

さて、本当にざっくりと解説しましたがいかがでしたか?実のところ、全て詳しく書いてしまうとかえって分かりにくくなってしまうと思いますので、次回からもこのようにサクサク進めていこうと考えております。
ちなみに、今回 紹介した工程を動画にしたものがあるので、それを見ていただけるとより分かりやすいと思います。お時間ございましたら、ぜひご覧くださいませ。